第46回日本有機農業研究会全国大会総会を開催
■報告と御礼
このたびは、第46回日本有機農業研究会全国大会・総会「全国有機農業の集い2018 in東京」にご参加、ご協力を賜り誠にありがとうございました。 おかげさまで、3月9~10日の2日間を通して全国から220名の参加がありました。心よりお礼申し上げます。
昨年10月下旬スタートの急ごしらえの実行委員会ではありましたが、有機農業に魅せられて入会し実行委員となった若手の人たちが中心になって大会の企画を構想しました。 有機農業に関心を持ってもらうべく関係メディアを洗い出し、フェイスブックなどSNSも活用して、 大会及び日本有機農業研究会の広報に努めました。東京都の後援のおかげで、都内の公的施設にチラシを配布することもできました。
当日の運営には、実行委員に加え、9名がボランティアとして、会場設営、受付、会場案内に協力してくださいました。 足立区都市農業公園の農業アシスタントの皆様、安全な食べ物をつくって食べる会の皆様、やぎ農園の皆様、誠にありがとうございました。
広報活動が効を奏して、第1日目午後の映画&講演会「食卓は訴える! しのびよる食べ物の危機」は、 会場の定員を大幅に上回る参加申込みがあり、急遽、2部屋を使用して映画と講演を交互に行う対応となりました。 講師の天笠啓祐さんには、同じ講演を2回していただきました。講演は大変好評で、遺伝子組み換え食品の真実がわかった、 毎日の食の見直しをしたい等の声が届きました。夜の「くるま座分散会」は、9つのテーマ別の部屋を用意しましたが、どの部屋でも時間の許す限り、熱い思いの語り合いが続きました。
2日目は種苗交換会からスタートしました。討論会は7~8名の小グループに分かれて、ワークショップ形式で行いました。 分散会同様、初対面の人と自由に話せる機会になり好評でしたが、時間不足で議論が深まらなかったという意見もありました。 ワークショップは初めての試みで課題も残りましたが、今後にむけて、生産者と消費者をつなぐ場づくり、方法を検討していきたいと思います。
午後のメインセッション「実践報告と討論」は6名の方から、お一人15分で実践報告をしていただきました。 子どもたちのおかれている現状課題の共有、解決策、実行の状況などについて報告していただきました。 短時間にこれだけの実践報告を聞ける機会はめったにないと大変好評でした。 具体的な取り組みがわかりとても参考になった、何かできそうな気がしたとの声もあり、うれしいことでした。
2日目の最後に、大会アピールを採択しました。私たちは、未来の世代に対してどう責任を取るのか。 解決策は「有機農業の推進」にあることを改めて確認できた大会でした。本大会が、明日の行動につながることを期待します。
皆様、ご協力いただきありがとうございました。
全国有機農業の集い2018 in 東京実行委員会委員長 若島礼子
同事務局長 吉川直子
■大会アピール
55年前の1962年、 レイチェル・カーソンが 『沈黙の春』 で殺虫剤などの農薬の乱用を告発したとおり、私たちは今、 「鳥も啼かない、花も咲かない」 世界の最終章に向かって歩んでいます。 農薬など化学物質による環境汚染の広がりは、私たちが生きる土台である空気・水・土・食べ物に及び、 さまざまな疾患の増加や生殖異常等の健康被害が出ています。 子ども・胎児の脳への悪影響も懸念されています。 遺伝子組み換えもゲノム編集も、 人間だけに都合のよい生命の操作や生態系の改変であり、 人間の生命までもがそこなわれるのだと思い知らされる研究報告が次々に出されています。
こうした事実を知った私たちは、未来の世代に対してどう責任をとるのでしょうか。
有機農業の推進は、 その重要な解決策です。 有機農業は環境を守り、 生産者と消費者が一緒になって「いのち」を育む農業です。豊かないのちを育み、虫かごを持って遊びにいける畑を、老いも若きもともに働ける田畑を次世代に残す農業です。 先祖が伝えてきた食文化や、 代々守り抜いてきた種子 (たね) を守る農業です。 そんな有機農業を通し、食と農の大切さを今一度見直し、 「本来のおいしさ」 と安全な食の環境を子どもたちにっなぐのは私たちの役目です。
日本有機農業研究会が「提携」(産消提携)を柱に有機農業を推進して47年。生産者と消費者がともに支え合う地道な有機農業は、生産者の「有機農業の技」を磨き、都市と農村の「縁」を深めました。 それらは今、 バーチャル全盛の時代にあって、 ひときわ存在感を放つものになっています。なぜなら、それらは「虚」ではなく「実」そのものだからです。
有機農業の田畑に立つたとき、 足元から得られる力強さ、 喜びはひとしおです。 生物の賑わいにあふれ、 虫も鳥も人間も等しく生命が肯定される場所だからです。 幸福は物量や金銭によってもたらされるものではなく、 地に足のついた、 身の丈にあった日々の暮らしからにじみ出るものではないでしょうか。
さあ、 これからの世代のために、世界各国の人々と手を携え、今日からできることを始めましょう。 未来の世代の子どもたちから、 「知っていたのに何もしてくれなかった」 と無為無策を告発されないように。
「有機な生活」への5つのヒント
☆ 食卓や田畑から農薬を減らしましょう。 とりわけネオニコチノイ ド系農薬を避けましょう。
☆ 遺伝子組み換え食品・家畜飼料・資材を避けましょう。
☆ 家庭用殺虫剤、抗菌・防力ビグッズ、香料など身近な化学物質を避けましょう。
☆ 有機農業でつくった食べ物を食べましょう。 食べ物が私たちの体をつくります。
☆ 「提携」は有機農家と消費者を直接「縁」で結ぶつながりです。「提携」を広げましょう。
2018年3月9-10日
全国有機農業の集い2018 in東京 実行委員会
■第46回 日本有機農業研究会通常総会 総会メッセージ(活動の方向性総論)
1 平和と非暴力を愛する農業・社会をめざそう
有機農業は、すべてのいのちと共に生き、いのちを育み、いのち響き合う豊かな自然をつくる。有機農業はまた、人や社会に対しても永続的・有機的なつながりを積極的に広げ、人々の心が通い合う非暴力で平和な社会を築く営みである。今日、近隣諸国との領土問題や軍備増強、憲法改定問題などで揺れるなか、今こそ、いのち響き合い、「食と農」、「土と自然」、「平和・非暴力」を土台とする社会へ向け、「有機農業」の真価を発揮する時である。
2 「3・11」の教訓を風化させず、原発再稼働に反対する
「3・11」の原発事故に際して私たちは、「原発は、いのちの原理に反する」「すべての原子炉廃炉に!」と、総会で特別アピールを決議し内外に発した。事故から7年経ち、原発再稼働の動きが出ているが、これに強く抗議し、私たちは再度、「原発といのち・くらしは共存できない」、「原発のない社会」をつくることを訴える。
森・里・海はいのちの基盤であり、これ以上の汚染は許されない。各地の再稼働反対の行動や原発差し止め・廃炉訴訟の裁判等に連帯していく。
福島支援について、引き続き福島東北有機農業支援委員会の福島有機農学校・猫の手の活動を行う。エネルギーについては、周辺の環境に配慮した小規模分散型・再生可能エネルギーの採用などを採り入れていくことも提唱する。
3 TPP・EPA・FTA等による、農業・農村の破壊、食の安全・健康・環境・社会的公正の後退・ 破壊を許さない
大企業優先、貿易優先のグローバリズムは、農業、農村崩壊の危機を招き、日本社会の基盤そのものをも突き崩そうとしている。今後、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)の交渉・締結が加速するとみられるが、それにより、食の安全・健康・環境・社会的公正に関わる諸制度が後退するようなことがあれば、これに断固、反対していく。
4 種子を守ろう
種子は、農業、食料の基盤となる重要なものである。グローバリズムにより、種子の企業支配が危ぶまれている。ローカルな都道府県等による公共の種子の基礎研究、育種、供給体制を堅持すべきである。日本の種子(たね)を守る会の活動とも連携していく。
そしてまた、農民が種子を採り、次の年に播いて育てること、すなわち自家採種は、“農民の権利”である。この権利が侵されないよう、守らなければならない。地域に世代を超えて伝わる在来品種は、多様で豊かな食文化を創り出してきた。だいじに守り継承されてきたこれらの種子を次世代に引き継いでいきたい。そのためのしくみについても検討を重ね、実践していく。
5 結成趣意書の原点、自立・互助の協同の精神に立ち、小規模・家族農業の有機農家と都市生活者等との「提携」をいっそう拡大し、自給・協同・有機農業を広めよう
グローバル化・大企業支配と産地間競争は、有機の世界にも及んでいる。「市場原理」に飲み込まれないための対抗軸として、今こそ地域に根差した自立する小規模・家族農家と都市生活者(消費者)・小規模実需者等との「提携」を明瞭に打ち出し、広げていこう。
分かち合い・助け合いの「協同組合の思想と実践」はユネスコ無形文化遺産となり(2016)、国連「家族農業の10年」(2019―2029)も始まる。世界大の視野に立ち、食と農と環境を確かなものにしていく活動を地域ですすめよう。各地で「提携フォーラム」を開催し、消費者参加型の提携推奨PGSプログラムなどを進め、人と人の友好的関係を本質とする「提携」の社会的存在意義を広く知らせていく。
6 次世代の子どもたちに「有機」の食べものを提供することが急務
子どもたちにこそ、新鮮で滋養に富む「有機」の食べものを食べさせたい。栄養・食育・保育にとって、有機農業が必要であり有効であることを伝え、保育園・幼稚園・学校に有機食材を使った「有機提携給食」の導入を図り、「提携」活動の新たな段階における広がりをつくりだしていく。
農薬がヒト・胎児の脳や乳幼児の身体に影響を及ぼし発達障害を引き起こすという、農薬と発達障害の因果関係が明らかになってきた。乳幼児、若者に農薬の残留していない食べものを供給し、農薬のない環境をつくることが急務である。栄養・保育・農業関連の教育機関においても、有機農業の必要性・有効性を学んでもらうことを訴えていく。
そしてまた、格差社会が広がっている今、有機食品は高いというイメージを払拭し、貧困・低所得者層にも手の届く方法を探り、そうした取組みに着手していく。
7 有機農家の複合的な農の技術の普及
本会の目的「環境破壊を伴わずに地力を維持培養しつつ、健康的で質の良い食物を生産する農業を探求し、 その確立・普及を図る」を再確認し、有機農業技術の普及拡大に努める。有機農家の複合的な農の技術を伝える講習会・研究会を開催すると共に、地域での「有機農業技術ネットワーク」づくりを行う。
経験豊かな本会の有機農業アドバイザー等の有機農場を実地で体験・体感しながら有機農業が学べる「有機農学校」を各地で実施し、農の技術や暮らし方などを伝え広める。有機農業アドバイザーの増員、その他の有機農業関連アドバイザーの新設、研修及び認定についても検討していく。
8 関連団体・活動等とのいっそうの連繋
(1)各地の有機農業研究会等との連携強化
各地の有機農業研究会等とのつながりを強め、共通課題を共有し、日有研の活動に活かしていく。環境団体、消費者団体等とも連携して食の安全、環境、社会的公正などの日有研活動を強化し、広義の有機農業運動への参加者を増やしていく。
(2)有機農業関係団体等との連携強化
有機農業推進法(2006)から11年余、第3期の有機農業推進基本方針へ向けた検討が始まる。有機農業本来の理念・思想を主張しつつ、有機農業関係団体や、日本有機農業学会、有機農業推進協会などとも連携・協力し、提言を行っていく。環境支払いその他の課題についても、連携して有機農業を強めていく。
(3)世界の有機農業、国際的な提携ネットワーク等との連携
国際有機農業運動連盟「IFOAM-Organics International」、同アジア、及びURGENCI: まちとむらの新しい連帯=国際提携CSAネットワークとの連携をはじめ、その他、世界各地の有機農業運動や関係者と交流し、連携していく。
(4)「一楽思想を語る会」への参画
「一楽照雄を語る会」(山形県高畠町)の運営委員会(2016年発足)の委員として日本有機農業研究会が参画し、日本有機農業研究会創立者一楽照雄を顕彰し、その思想を継承普及させる同会に協力していく。
2018年3月10日
第45回日本有機農業研究会/第37回長野県有機農業研究会 合同大会を開催
3月4,5日、長野県有機農業研究会と合同で開催した第45回日本有機農業研究会全国大会総会は、 約700名が参加してにぎやかに開催され、無事、終了しました。
第45回日本有機農業研究会通常総会では、活動の方向性を示す「総会メッセージ」を採択しました。
長野県有機農業研究会のホームページの「長野大会」の欄に、第1日目の「土と暮らしのオープンキャンパス」の報告動画がありますので、ご覧ください。
また、総会の主な報告を以下に記します。
「たぶん、なんとかなる」-長野大会を終えて・・・・・・・・・・・・・・小城雄哉
長野県有機農業研究会会長の由井と申します・・・・・・・・・・・・・・・ゆいまなみ
家(すみか)って、自分でつくれるんだ!・・・・・・・・・・・・・・・・酒井明弘
講演 若月先生と有機農業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・浅沼信治
「提携フォーラム」
「食」と「農」の提携で「地域」の復権を!・・・・・・・・・・・・・・・久保田裕子
アメリカにおける地域支援型農業(CSA)とローカルフード推進運動の展開・・近藤和美
第44回 日本有機農業研究会全国大会・総会を開催
第44回日本有機農業研究会全国大会報告とお礼
―参加者の親睦を深めた群馬大会
大会実行委員長 大塚一吉
おだやかに晴れた3月5~6日、第44回日本有機農業研究会全国大会「全国有機農業・土と文化の集い 2016 in 群馬」に全国より御参加いただきありがとうございました。会場のはまゆう山荘は公共交通もない山間部にありますが、約150名(宿泊128名)の参加があり、盛会のうちに終了いたしました。
実行委員長開会挨拶に続き、佐藤喜作日本有機農業研究会理事長の主催者挨拶、来賓として農林水産省生産局農業環境対策課課長補佐町口和彦氏から挨拶、後援団体からの来賓として群馬県農政部長宮崎一隆氏、及び高崎市からは市長代理として農政部長野口浩康氏がメッセージを読み上げ、大会が始まりました。
大会は、まずベテラン有機農業生産者2名―群馬の宮田常雄さん、愛媛の泉精一さんの基調講演を聞き、その後少人数に分かれて行った「くるま座分散会」(12グループ)では参加者全員が発言し盛り上がりました。続くライブコンサートではイ・ジョンミさんの心にしみる命の歌を聴き、有機野菜をふんだんに使った懇親会、夜の語らい会と、時間が足らないほど語り合えた大会でした。2日目は、いつもの種苗交換会のほか、大小の農具を持ち込んで「アイデア農具の展示会」が開かれ、多くの関心を呼びました。参加者全員が語ったくるま座分散会とライブコンサートは、日有研の全国大会では新しい取り組みだったと思います。
有機の「機」とは「天地、機あり。」の「機」。天地つまり宇宙には法則がある。日本有機農業研究会は、この宇宙万物の法則のもと、あるべき姿の農と食、人と自然を追求し、人と人との有機的関係を深めることを目指す会です。この原点に立ち戻り、生産者・消費者の「提携」をどう推し進めていくか、生産者の経営を具体的にどう支援していくか等、新たな提案も出されました。これらの提案等が今後の会の活動に生かされることを期待しています。 大会では、私たちの思いを表現した「大会アピール」を読み上げ、採択しました。
第44回日本有機農業研究会全国大会 アピール
どうつなぐ? 食と農、地域の暮らし
―じっくり語ろう 今とこれからー
2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故により私たちは、農作物の放射能汚染のみならず、大地・国土の環境汚染や人と人との絆の分断、そして地域社会の崩壊を経験しました。しかし、この社会はこれを教訓にできないでいるように見えます。大量生産と大量消費や大量廃棄が、経済優先・効率優先の社会を作ってきました。TPPにおける輸入農産物の関税撤廃などもますますこの傾向を推し進めるでしょう。農業を取り巻く環境は年々厳しさを増していますし、格差・貧困など社会問題も山積です。
私たち生産者と消費者は、食や農や暮らしを大切にした、経済優先・効率優先でないより良い社会のあり方に視線を向けなければなりません。いまこそ、農の本来のあり方を再認識する時です。農家は土の上に種を播き、大切に育て、収穫します。できた農産物は農家の暮らしの表現です。自然に従った暮らし方、手作りの暮らし方、そして喜びや感謝など、農作物だけでない暮らしの文化、自給の思想を消費者と分かち合うことができる提携がより良い社会を作っていくことになると思います。有機農業には生命の、生活の根本から地域や社会を変える力があるのです。私たちは、持続可能な農業、生産者と消費者を結ぶ自給的暮らしを実践していくことで、本当に豊かであたたかみのある社会、平和な社会を作っていくことができます。より良い社会も平和も押し付けられるものではなく、私たちが創造していくものです。
これからの世代に有機農業を引き継ぐために、都市生活者をはじめとする消費者と生産者が共に協力して自給の輪を広げていきましょう。食の安全・安心のみならず、地域社会・環境・平和問題など、これからの社会のありかたを担うのが有機農業なのだとの自負をもち、この活動を次世代につなげていきましょう。
2016年3月5日
日本有機農業研究会 2016年度・活動の方向性
1 平和と非暴力を愛する農業・社会をめざそう
有機農業は、すべてのいのちと共に生き、いのちを育み、いのち響き合う豊かな自然をつくる。有機農業はまた、人や社会に対してもやさしく有機的なつがなりを積極的に広げ、人々の心が通い合う非暴力で平和な社会を築く営みである。今日、近隣諸国との領土問題や軍備増強・集団的自衛権や特定秘密保護法制定、そして安全保障法制定などで揺れるなか、今こそ、いのち響き合い、「食と農」「土と自然」、「平和・非暴力」を大切にする社会へ向け、「有機農業」の真価を発揮する時である。
2 TPP に反対、食の安全・健康・環境・社会的公正の後退・破壊を許さない
大企業優先、貿易優先のグローバリズムは、農業、農村崩壊の危機を招き、日本社会の基盤そのものをも突き崩そうとしている。加えてTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が、食・環境・健康や暮らし全般に関わる保険など社会のあらゆる部門に国内法を超越して統合の触手を伸ばそうとしている。そのようなTPPの推進に断固反対する。
3 原発再稼働に反対する
「3・11」の原発事故に際して私たちは、「原発は、いのちの原理に反する」「すべての原子炉廃炉に!」と、総会で特別アピールを決議し内外に発した。事故から5年。原発再稼の動きが大きくなっているが、これに強く抗議し、私たちは再度、「原発といのち・くらしは共存できない」、「原発のない社会」をつくることを訴える。
森・里・海はいのちの基盤であり、これ以上の汚染は許されない。各地の再稼働反対の行動や原発差し止め・廃炉訴訟の裁判等に連帯していく。
福島支援について引き続き福島東北有機農業支援委員会の活動を行うと共に、エネルギーについては小規模分散型・再生可能エネルギーの採用などを採り入れていくことも提唱する。
4 結成趣意書の原点、分かち合い・助け合いの協同に精神に立ち、有機農家と都市生活者等との「提携」をいっそう拡大し広める
今日、グローバル化・大企業支配と産地間競争は有機の世界にも及んでいる。「市場原理」に飲み込まれないための対抗軸として、今こそ地域に根差した自立する家族農家と都市生活者(消費者)・小規模実需者等との「提携」を明瞭に打ち出し、広げていかねばならない。分かち合い・助け合いの協同の精神による食と農の「提携」を基軸とする活動が、地域に確かなつながり(コミュニティ)を確立していくことになるだろう。
各地で「提携フォーラム」を開催し、消費者参加型の提携推奨プログラムを進め、人と人の友好的関係を本質とする「提携」の社会的存在意義を広く知らせていく。同時に、例えば保育園・学校給食などをはじめとする新たな段階(ステージ)における「提携」活動の広がりをつくりだしていく。
5 有機農家の複合的な農の技術の普及
経験豊かな本会の有機農業アドバイザー等の有機農場を実地で体験・体感しながら有機農業が学べる「有機農学校」を各地で実施し、農の技術や暮らし方などを伝え広める。
有機農業アドバイザーの増員、その他の有機農業関連アドバイザーの新設、研修及び認定についても検討していく。
6 在来品種・固定種、有機農業に向く種苗の普及・継承のあり方の検討と実践
地域に世代を超えて伝わる在来品種は、多様で豊かな食文化を創り出してきた。だいじに守り継承されてきた種子を次世代にいかに引き継いでいくか。検討を重ねつつ、継承していく。
7 関連団体・活動等とのいっそうの連繋
(1)各地の有機農業研究会等との連携強化
各地の有機農業研究会とのつながりを強め、共通課題を共有し、日有研の活動に活かしていく。環境団体、消費者団体等とも連携して日有研活動を強化し、有機農業運動への参加者を増やしていく。
(2)有機農業関係団体・環境団体等とのよりいっそうの連携
全国有機農業推進協議会、有機農業参入促進協議会、日本有機農業学会、有機農業推進協会などの有機農業関係団体や、有機農業の明日へ向けた青年たちの活動と連携・協力し、有機農業運動をいっそう強めていく。
昨年は、有機農業関係5団体が共同して、2006年有機農業推進法制定から10年を記念し、12月8日を「有機農業の日」に制定する運動を立ち上げた。同法制定10周年を迎える今年は、「有機農業の日」「オーガニック・キャンペーン」に共同して取り組んでいく。
(3)世界の有機農業、国際的な提携ネットワーク等との連携
国際的な有機農業運動団体「IFOAM-Organics International」、同アジア、及びURGENCI: まちとむらの新しい連帯=国際提携CSAネットワークとの連携をはじめ、その他、世界各地の有機農業運動や関係者と交流し、連携していく。
昨年の国連「国際土壌年」に続き、今年は「国際マメ年」(IY Pulses)。乾燥豆類のもつ高い栄養価による人の健康への貢献をはじめ、伝統食文化、土壌肥沃度・土壌の被覆、家畜の健康、気候変動への対応などに有効であることを再認識し、活用していく。
(4)「一楽思想を語る会」への参画
「一楽照雄を語る会」(山形県高畠町)の運営委員会委員として日本有機農業研究会が参画し、日本有機農業研究会創立者一楽照雄を顕彰しその思想を継承普及させる同会に協力していく。
(第44回日本有機農業研究会大会総会2016・3・5-6 群馬県高崎市倉渕町「はまゆう山荘」にて)
第41回 日本有機農業研究会全国大会・総会を開催
大会総会報告
日本有機農業研究会(理事 久保田裕子)
3月2~3日、静岡県富士市の富士常葉大学を会場にして、第41回日本有機農業研究会全国大会総会「全国有機農業者と消費者の集い in 静岡」が、のべ450人の参加により盛大に開かれました。なお、この場をかりまして、ご参加・ご後援・協賛など、さまさまなご協力いただいたみなさまに感謝申し上げます。
2日午前に開催した第41回日本有機農業研究会総会では、東日本大震災・原発事故から2年、また、経済社会への大津波ともいえるTPPを前に、次のような活動方針を「総会メッセージ」として採択しました。
第41回日本有機農業研究会総会メッセージ(2013・3・2)
「いのち」「食と農」「土と自然」「平和」を大切にする社会へ
―森・里・海の連携による「流域自給」と「提携」を協同の精神で
「3・11」の原発苛酷事故に際して私たちは、「原発は、いのちの原理に反する」「すべての原子炉を廃炉に!」と、総会で特別アピールを決議し、内外に発した。事故から2年、一部で原発再稼働の動きがあるが、これに強く抗議し、私たちは再度、「原発といのち・くらしは共存できない」、「原発のない社会」をつくることを訴える。
有機農業は、生命あふれる農と食の営みであり、それは大きな自然の循環の中で、自然の恵みにより生かし生かされる生きものと人々の有機的なつながりを取り戻し、また新たにつくり出すものである。森・里・海をつなぐ腐植のはたらきに着目し、多数の「里」に住む人々がその拠って立つ大地・土壌を腐植に富んだ健康なものにすると同時に、森・里・海の連携・提携による「流域自給」を強め広げていくことを提案する。エネルギーについては小規模分散型・再生可能エネルギーの採用、抗酸化力に富む有機農産物を地域の多様な食事の場に採り入れていくことも提唱する。
創立以来すすめてきた「提携」(有機農業者と消費者の提携、1978年に「提携10原則(提携10か条)」)は、その本質を「人と人の友好的・有機的なつながり」にあるとしている。創立者一楽照雄は、「自立・互助」「子どもに自然を、老人に仕事を」の言葉を残し、そして有機農業は「世直し運動だ」と喝破した。
昨年、発刊から50年を迎えたレイチェル・カーソン『沈黙の春』も、その警告がいまだに解消されていない社会に私たちが住んでいることを訴えかけている。原発事故による放射能汚染問題と共に、化学合成農薬・化学肥料やそれにより損なわれる生物多様性、化学合成等の食品添加物を多用する加工食品多食の食事、遺伝子組み換え作物・遺伝子組み換え生物、放射線食品照射問題など、多くの課題にも目を向けていかなければならない。
本会は、貿易自由化の動きに対しては、従来から「地域自給」「地産地消」と「提携」を基軸とした実践的な活動を展開してきた。さらに広い視野から、森・里・海の自然と人々をつなぐ「流域自給提携ネットワーク」も提唱している。食の安全・安心、農林漁業を基盤とした地域社会に打撃となるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)推進に断固反対する。
有機農業は平和を志向する農業であり、いのちを育む営み、すべてのいのちと共に生き、自然に対しても人に対してもやさしい有機的なつがなりを積極的に広げ、非暴力で平和な社会を築く営みである。今こそ、「いのち」「食と農」「土と自然」、「平和」を大切にする社会へ向け、「有機農業」の真価を発揮する時である。
3月2日午後には、現地見学会。2つのコースに分かれ、有機農場のようすやレストランとの連携などを実地に見学。また、富士常葉大学では、『食の未来』のデボラ・ガルシア監督の最新ドキュメンタリー『土の讃歌』を見ました。
3月2日夕刻からは、富士市、富士宮市、静岡市など地元のおいしい食材による地産地消交流会で舌鼓。
3月3日は、朝から種苗交換会、記念講演は、『長生きしたけりゃ肉は食べるな』で話題の人、若杉友子さんのパワフルなお話。5つの分科会で白熱する議論など、充実した2日間でした。
第41回日本有機農業研究会大会
全国有機農業者と消費者の集い 2013 in 静岡
於 富士常葉大学(富士市)
第41回日本有機農業研究会全国大会 アピール
「いのち」「食」「土」を大切にする
~ステキなオーガニックライフを求めて~
雄大な富士山から駿河湾へと続く豊かな自然の中、「全国有機農業者と消費者の集い2013 in 静岡」を静岡県富士市で開催しました。
経済優先社会の矛盾は、これまでも自然環境や農林漁業に悪影響を与えてきましたが、特に2011年3月11日の東日本大震災・福島第一原子力発電所の苛酷事故による放射能汚染を経験し、私たちは今、あらためて暮らしのあり方を見直す時にきています。
原発事故による放射能汚染が、自然と共生する農林漁業に大きな打撃を与えたにもかかわらず廃炉までの道筋は未だに不明瞭です。また、加工食品の消費が増え、食の生産から消費までの過程がますます複雑で見えにくくなっていることで、消費者は安全安心を求めつつも価格の安いものを優先し、食料の輸入依存度は高いままです。さらに、国際競争力を持つ農業の推進は、経済合理主義や効率化が優先され、いのちをつなぐ本来の農業の衰退に歯止めをかけられていません。高度経済成長は、量的豊かさの一方で環境破壊や健康障害をもたらしています。人と人のつながりが希薄になり、次世代への伝統の継承も困難になってきています。
グローバル化した現代社会においては、食料問題もエネルギー問題と切り離すことはできず、生産者だけでなく、消費者にもライフスタイルの見直しを迫られています。
有機農業は、何千年・何百年も自然と共にあった農業の伝統を踏まえた自給と循環の農業で、豊かな生物が息づく「土」を大切に、生きとし生きるものが有機的につながり・つながる農業の実践をめざすものです。
無数の生命と植物の共生する豊かな土壌こそが、環境を改善し、人々の健康と健全な人間社会を育むということを、農業者だけでなく消費者も知らなければなりません。そして、グローバルな視点に立ちながら、自然を尊重し、いのちをささえ、地域をささえ、互いの個性を認め合い、人と人が繋がるローカルな生き方は、本来 人が求めている無理のないステキな生き方です。
私たちは、この豊かな緑あふれる自然を基盤として生きとし生けるすべての「いのち」を健やかに次世代につなげていくために、森・里・海の「いのち」の循環の中で人々が繋がり、多くの課題を一緒に乗り越えていくことを誓います。
2013年3月3日
全国有機農業者と消費者の集い 2013 in 静岡
参加者一同
青年部主催 有機農業入門講座2013年
■プログラム
講演1「バイオガスと農業」
桑原 衛さん/ぶくぶく農園・NPO法人小川町風土活用センター(NPОふうど)代表理事
講演2「天ぷら油でトラクターを走らせてみよう」
臼井 健二さん/シャロムコミュニティー、WVO(waste vegetable oil 廃油)グループ代表
講演3「非電化で有機生活~電気を使わない選択肢~」
藤村 研介さん/非電化工房 副代表
懇親会
■2013年2月23日(土)、國學院大学1号館で開催されました。
第40回 日本有機農業研究会全国大会・総会を開催
あったかゆうき~本当の豊かさと協同を求めて~
西中国大会の開催報告とお礼
2012年3月10日(土)~11日(日)、「全国有機農業の集い2012in西中国~日本有機農業研究会第40回大会・総会」は、あったかゆうき~本当の豊かさと協同を求めて~のメインテーマのもとに、全国、主に西日本から延べ700名が参加されました。命の生かしあいを確かめよう、人と人のつながりを大切にしよう、三代先の未来を考えようと、大勢ご参加いただきました皆様に、またご協賛いただきました個人、団体、企業ならびにご支援いただきました行政、とりわけ神石高原町役場に感謝とお礼を申し上げます。
本大会は広島・島根・山口3県の活動団体で構成する実行委員会が中心となり、各地からの話題提供を企画し、食と農の今日的課題についての情報と論議の場を設定しました。その結果、有機農業者ばかりでなく、幅広い層と世代から多数の方が参加され、講演会、分科会などの各行事とも、“熱気のある”大会となりました。
第1日のメイン会場(油木体育館・約350名)では、東日本大震災の犠牲者への黙祷で始まった開会セレモニー、次いで中尾慶子さんの講演会が行われました。6会場で実施の分科会には計348名(豊かな食育:46名、原発事故・放射能汚染と有機農業:60名、協同運動としての有機農業:22名、有機農業の技術:119名、活かそう環境支払:40名、どうする?有機農産物の流通と販売:61名)、夕べの交流懇親会には240名が集まりました。
第2日(神石高原ホテル)は、早朝から種苗交換会に約70名、次いで宇根豊さんの講演会と閉会セレモニーに約300名、午後からの食と農の映画界に約150名、操体法教室に約30名、日有研総会に47名、吹雪まじりの現地研修会に40名が参加されました。また、有機食材テント村、夜の語らい、余興の子供神楽、地元産品の販売コーナーなどにも多数楽しんでいただけました。
過疎の発祥地であり、高齢化が進む、そして交通アクセスがよくない中国山地において、本大会を2日間大過なく、好評と盛況のうちに開催できましたことは、開催の地元といたしましては大きな収穫でした。今後における有機農業の活路、中山間地域農業のありかた、持続可能な農業のありようなどについて、新たな方向づけと有益な知恵がたくさん得られました。これらが食と農を大切にする生き方や自立・共助の暮らしの変革へのヒントとして全国各地において活用されることを強く確信しております。
ご参加いただいた皆様のますますのご活躍とご清栄を祈念いたします。どうも有難うございました。
大会実行委員長 伊勢村 文英
第40回日本有機農業研究会全国大会 アピール
あったか・ゆうき 本当の豊かさと協同を求めて
「全国有機農業の集い2012in西中国~第40回日本有機農業研究会全国大会及び総会」が、世界で最初の放射能被爆地広島県で開催されました。昨年3月11日の東日本大震災を引き金とする東電福島第一原発事故による放射能汚染は地球規模で進行し、東北・関東の人々の生活や営農を直撃し、森や里、そして海に大変な汚染をもたらしています。私たちは1年前の総会で「すべての原発を廃炉に!」の緊急アピールを採択しました。10万年後も管理しなければならない原発の放射性廃棄物、その処理能力を持たない人間が原発を持つことはできないことは明らかで、再度、今大会で被爆地広島から「世界の原発を廃炉に!」に向かって行動することを決意し、原発エネルギーではなく、生命(いのち)のエネルギーが輝く国にしようではありませんか。
政府は、昨年11月TPP(環太平洋連携協定)の交渉参加を表明し、国内外から農業への圧力が強まっています。日本の林業は輸入自由化による木材価格の低迷で壊滅的な打撃を受け、森林は荒廃し、山村集落は崩壊寸前です。日本の農業は選択的拡大による規模拡大や所得補償で解決する問題ではありません。TPPの議論を契機に、農林漁業がもっと元気になる取り組み、多くの国民が食や農山村に関心を持っている今、集落や地域で「本来の農林業のあり方」「食べ方」「暮らし方」など人間らしく生きるための議論をするチャンスと捉え、行動し、連帯しなければなりません。
日本有機農業研究会が結成されて40年が経過しました。その節目の時期に、異常気象や大災害に私たちは遭遇しています。この先どのように事態が展開するか分かりませんが、創立者一楽照雄が私たちに残してくれた「自立・互助」「子どもに自然を、老人に仕事を」の意味を深く確かめ合いながら、生産者と消費者の提携の精神をいまこそ発揮して、協同による有機農業運動、食の農の連携運動を全国展開し、森・里・海の連携による日本農業の展望、食と農を大切にした生き方・暮らしの変革を考えていかなければなりません。
「過疎」の発祥地中国山地に新たな展望を見つけるためには、消費者の理解と協力は必須(産消提携)です。「人と人」、「人と自然」、「むらとまち」の共生をめざして、全国の生産者と消費者が「自立・互助」をテーマに連帯し、協同して、会員の拡大を図り行動することを誓いまして、本大会アピールとします。
2012年3月11日
「全国有機農業の集い2012 in 西中国」参加者一同
於:広島県神石郡神石高原町
青年部主催 有機農業入門講座2012年
■プログラム
・第1部 講演「汚染社会を生きるための有機農業の思想と技術~農薬・遺伝子組み換え・放射能汚染に負けない有機農業~」
[講師]舘野廣幸さん (機稲作農家・日本有機農業研究会理事・民間稲作研究所理事)
・第2部 パネルディスカッション「有機農業をはじめるには」
[パネリスト]
相原成行さん:相原農場(神奈川県藤沢市)、有機農家・日本有機農業研究会理事
城月直樹さん:相原農場研修生
木田恵美子さん:みらくる農園(神奈川県横浜市)・2010年就農
[司会]深谷峰子さん:深谷農場(埼玉県熊谷市)・2008年就農
・懇親会 有機食材をつかった料理を囲んで♪
■2012年2月25日(土)、國學院大学1号館で開催されました。
第39回 日本有機農業研究会全国大会・総会を開催
大会を終えて
2011年3月12日(土)~14日(月)、『全国有機農業の集いin福井県越前市』(第39会日本有機農業研究会全国大会・総会)を予定通り開催し、計画通り完遂させることができました。県内外から参集された皆さま、また何かと支援いただいた方々に心よりお礼申し上げます。特に前日の3月11日(金)午後、東日本大震災が勃発し計画通りの開催が危ぶまれましたが、主に県外参加者の欠席は30名余りに止まり、予定通り開催することができました。39年におよぶ全国大会歴史の中できわめて印象深い大会と位置付けられましょう。
大会では2泊3日の日程で盛りだくさんな行事を実施しましたが、3日間で延べ参加者数は約800名を数えました。1日目のメイン行事には約350名が参加、記念講演や劇団ババーズ公演は好評で、懇親交流会には約250名余りが集まりました。2日目の分科会は8テーマで8会場に分かれて実施、延べ400名の参加があり、熱気に溢れていました。午後は恒例の種苗交換会を開催、これまでにない約120名が参集。総会には約40名の出席があり、福島原発事故を受けて、緊急アピール「すべての原発を廃炉に!」を採択しました。2日目~3日目にかけて現地交流・視察会を実施、3地区で49名の参加がありました。
3日間、全ての行事を事故もなく終えることができ、参加者の皆様にはそれぞれ満足していただけたものと思います。100名を超えるスタッフ、共催・後援いただいた関係機関、そして県内外から参集された、たくさんの皆様に感謝申し上げます。
全国有機農業のつどいin福井県越前市
実行委員長 中川 清
第39回日本有機農業研究会全国大会 アピール
いのちを育む有機農業、人と自然の共生を求めて
このたび『全国有機農業の集い』が、福井県越前市で開催されましたこと、有機農業に取り組む農家としてうれしく、誇りに思います。
2009年度に福井県で全国植樹祭が開催されましたが、本県には全域で原生林や歴史ある銘木が数多く残り、また清水(しょうず)といわれる名水や湧き水があちこちで見られるなど、いのちの源である豊かな水にも恵まれています。このような豊かな自然環境は、県全域が有機農業に取り組む上で、恵まれた条件と考えられます。
ところで、皆様は宮崎駿監督の映画『となりのトトロ』をご存知でしょうか。この映画で描かれています田舎の田園風景や農作業の様子は、まさに日本農業の原点の姿であり、人々の心和む日本のふるさとの原風景そのものです。今回の現地研修地区もこのような雰囲気そのものの農山村です。そして全国からお越しの皆さんのところにも、こんなすてきな農村の風景や、農業の営みが数多くあると思いますが、このような農業、農村を未来の子どもや孫たちに守り継いで行きたいと思いませんか! それが訴えの一つ目です。
次に、すてきな風景を守り継ぐ方法として、持続可能な農業で、農村や化学肥料に依存することなく、自然のものを使用した栽培により、健康によく、自然環境にも優しく、生き物との共生を可能とする有機農業の実践があります。
今日お集まりの方々は、有機農業や生物多様性への関心が今ほど高くなかった時代から、ご自身やご家族の農薬への不安や、愛する子や孫のすこやかな成長を願い、持続的な農業を目指し、熱い思いに駆られて有機農業に取り組んでこられました。
これからも、みなさんとともに有機農業を実践し、その輪を一層広げることで、日本の農村、農業の原風景を守り続けていきましょう。これが二つ目の訴えです。
昨年、越前市には40年ぶりにコウノトリの飛来があり107日間滞在しました。また越前市近郊の里地、里山には、全国的にも希少種で生息分布が限られているアベサンショウウオをはじめ、日本全国で数を減らしているメダカやゲンゴロウ、ゲンジボタルなどの生き物が見られます。これらの生き物たちは、生きているということにより、人間に対しいのちのあり方や大切さを教え、自分たちの住む地球環境の大切さから健康や未来の子どもたちのことまで、様々なメッセージを伝えてくれます。
“いのちを育む有機農業”を通じて、これら多様な生き物を守り、共存していくことが、地球環境の保護となり、人のいのちも育み、“人と自然の共生”につながるのではないでしょうか。これが三つ目の訴えです。
最後に“いのちを育む有機農業、人と自然の共生を求めて”のテーマの下に集まった私たちは、日本の農業、農村の原風景を子や孫に伝えるため、あらゆる生き物のいのちの大切さを訴えながら、それらを守り育てる有機農業を広め、深め、人と自然の共生を目指して、今後も連携しながら取り組んでいくことを誓い、本大会のアピールといたします。
青年部主催 有機農業入門講座2011年
■プログラム
・第1部「映像で見る有機農業」
[講師] 久保田裕子さん (國學院大学教授)
・第2部「有機農業と暮らし」
[報告者]
浅見彰宏さん (1996年就農 福島県喜多方市)
小掠純子さん (2001年就農 長野県下伊那郡阿南町)
北山弘長さん (2006年就農 茨城県常陸太田市)
[司会] 関塚学さん (2002年就農 栃木県佐野市)
・懇親会 有機食材をつかった料理を囲んで♪
■2011年2月20日(日)、國學院大学2号館で開催されました。
第38回 日本有機農業研究会全国大会・総会を開催
御礼
このたびは大会にご参加下さり、御礼申し上げます。雨模様の天気にもかかわらず、お陰さまで、2日間にわたり約450名の参集があり熱気に満ちた大会となりました。大会で再会し、また新たに結ばれた人と人のつながりが有機農業のさらなる普及、拡大に向けて役立つことを大会実行委員会にかかわった者として願っております。 なお、大会初日採択されました大会アピールを同封させていただきます。
まずはご参加の御礼まで。
全国有機農業のつどい神奈川大会
実行委員長 大平 勝
事務局長 安田 節子
第38回日本有機農業研究会神奈川大会 アピール
有機でひらこう! 日本農業と食の未来を
一昨年世界を襲った穀物と原油の高騰。これにより輸入飼料頼みだった酪農、畜産農家の倒産が続出、食料品価格も軒並み上がりました。輸出国が輸出禁止に踏み切る事態を目の当たりにして、食料・生産資材を輸入に依存する日本の足元の危うさを認識させられました。農林水産省は、穀物価格は今後も値上がり基調で推移し続けると試算しています。穀物、飼料、肥料、燃料のどれもが海外からいつでも安く手に入る時代は終わりを告げ、輸入資材で成り立つ工業的近代農業は持続不可能な事態を迎えつつあります。
そして、これまでのグローバリズムの推進により、安い輸入物に押され、国内の第一次産業は疲弊し切っています。危うい日本の食料安全保障を建て直し、農林水産業を復興させるためにはなにをなすべきでしょう。
また、日本は単位面積当たりの農薬使用量が世界一(OECD、2002年)です。田畑、人家、河川、学校などが混在しているところで日常的に農薬を使用し続けています。土壌、空気、飲料水の汚染や、またお茶や果物、野菜など農作物から摂取する農薬の健康への影響はもはや無視できないレベルにあります。
農地・水田の減少や放棄地の増大、荒れ果てた山林、地方の高齢・過疎化、農地の肥沃度喪失、減少著しい生物多様性、癌死やアレルギー、欝、神経疾患の蔓延など。これらはみなつながっています。工業的近代農業推進とグローバリズムの価格競争の果てに、いのちを守るコストは切り捨てられてきました。いったい誰が利益を得たのでしょう。農家でも消費者でもないことは確かです。
経済、環境、健康のどの面からみても、これまでのグローバリズムや工業的近代農業志向では持続できないことは明白です。展望は有機農業にあります。有機農業は、安全な食べ物を提供するだけでなく、地域の生物多様性と物質循環を守り、土壌の肥沃度を復活させ、生産者と消費者の有機的つながりを取り戻します。
有機農業の土の核心をなす「腐植」(土壌有機物)は、健康な森の営みの上でも生物豊かな海をつくる上でも大変重要な働きをしていることが近年の研究でも判ってきました。私たちは生産者と消費者の「提携」を“生産消費協同”としてあらためて位置づけ、農業分野にとどまることなく森林(特に広葉樹林)と里(田畑)、湖沼・海をつなぐ流域全体の取組みとして自給と提携を広げていきましょう。それは、国際フードシステムを支配する多国籍アグリビジネスの世界とは別の、地域に根ざした流域自給圏を作り出すことでもあります。
「有機でひらこう!日本農業と食の未来を」の本大会テーマのもと、ここに参集した私たちは、このような有機農業の普及拡大のために、互いに連携し、力を合わせて活動を広げてまいりましょう!
第38回日本有機農業研究会神奈川大会 資料販売
有機でひらこう! 日本農業と食の未来を
大会資料(146ページ)を、価格 500円+送料にて頒布させていただきます。
ご希望の方は日本有機農業研究会までご連絡ください。
ただし、数に限りがございます。ご了承ください。
神奈川大会資料
青年部主催 有機農業入門講座2010年
■基調講演 「有機で広がる いのちの農場(ひろば)」
江原 浩昭さん(ガバレ農場、埼玉県鴻巣市)
■パネリスト
小野寺 幸絵さん(栃木県) 1999年就農
今井 虎太郎さん(神奈川県) 2005年就農
井上 宏輝さん (神奈川県) 2009年就農
■司会
清水 彰浩さん (栃木県) 2010年就農
■2010年2月6日(土)、「有機農業入門講座2010」が國學院大學にて開催されました。報告は機関誌『土と健康』No.416に掲載されています。
『土と健康』のお問い合せは、TEL03-3818-3078日本有機農業研究会事務局まで。
第37回 日本有機農業研究会全国大会・総会を開催
第37回日本有機農業研究会全国大会(3月14、15日、於・新潟県新発田市) は、全国から有機農家、「提携」消費者、農業関係者など、約400人が参加して盛大に開か れ、「大会アピール はばたけ 有機農業」を採択して終了しました。
記念講演は、熊本で長年、水俣病に関わってきた医師原田正純氏が『水俣に導かれ て』という演目で行いました。日本の近代化を牽引した化学工業とそれによる公害の 象徴ともいえる水俣病は、近代化農業の方向に疑問を呈した有機農業の原点ともいえ ます。分科会では患者さんの会からのお話、映画『阿賀に生きる』の上映、翌日の現 地見学会では、昭和電工鹿瀬工場の現在のようすなどを見ました。
他に、生産者と消費者の提携活動、生協の活動、温暖化問題と有機農業技術、遺伝 子組み換え反対運動、グローバル化する経済不況と有機農業など、幅広いテーマでの 分科会などがもたれました。
大会の概略の報告は、『土と健康』に載せてゆく予定です。
鶴巻実行委員長
第37回日本有機農業研究会新潟大会 アピール
羽ばたく有機農業めざし、「チェンジ」を !
今般、「全国有機農業の集い2009」が朱鷺羽ばたく新潟県の新発田市で開催されました。会場の地は、かつて減反開始の折は農民運動で全国にその名をはせた阿賀北福島潟に近く、さらには、新潟水俣病の現地でもあります。
いわば、日本農業近代化の大波を直に受けてきた地域であります。
06年12月有機農業推進法が制定され、国の責務として有機農業が進められることとなりましたが、県自治体行政、研究機関におけるその後の取り組みは、今ひとつの状況と言わざるを得ません。最近では、国研究機関の中枢東京大学が禁止農薬を使用して栽培試験を行っていたことが報道されました。
法の重さをきちんと自覚した有機農業推進に向け「チェンジ」が必要です。
米主産地新潟県の米菓業界では、原材料に大量の輸入米が使用されていることも明らかとなりました。自給率向上を掲げる一方で減反が強化され、それでも米価は低迷し、追い打ちをかけるがごとき輸入米の増加、現場は担い手不足、高齢化が進む……。
ここでも必要なのは「チェンジ」です。
そうした中でも、ここに集う全国の仲間たちは、消費者と交流・連携する中で懸命に有機農業に取り組んでいます。これからはさらに一歩を進め、有機農業は単に農薬を使用しないだけでなく、消費者と一緒になって生活全体を足元から見直す、いわば世直し運動であるとの位置づけが必要です。
私たちにも「チェンジ」が求められているのです。
外に「チェンジ」を働きかけるとともに、内も「チェンジ」を心して、有機農業の一層の発展に取り組みましょう。
2009年3月15日
第37回日本有機農業研究会大会参加者一同
青年部主催 有機農業入門講座2009年
撮影 中村易世
■パネルディスカッション 「有機農業をはじめました! 88人の実践」出版を記念して
■パネリスト
阪本美苗さん・さかもと自然農園(山形県) 1995年就農 寒冷地
山木幸介さん・三つ豆ファーム(千葉県) 2005年就農 中間地
鈴木茂孝さん・伊豆松崎とんび農園(静岡県) 1998年就農 暖地
■司会
佐久間清和 ・さくま草生農園(千葉県) 1997年就農 中間地
青年部主催 有機農業入門講座2008年
撮影 橋本聡子
■パネルディスカッション 「就農の実際」
パネラー
松井眞一(栃木県茂木町 就農5年目)
横田裕美(静岡県南伊豆町 就農5年目)
増田達矢(神奈川県津久井町 就農7年目)
司会
関塚 学(栃木県佐野市 就農7年目)
第36回 日本有機農業研究会全国大会・総会を開催
有機農業推進法制定後の2年目に向け、今こそ有機農業の原点に立ち戻り、結成趣意書の意義をたどり、これまで力を入れてきた「自給」「提携」を再確認し、新たな一歩を踏み出す大会にしたいと、理事・東京の幹事等による実行委員会が立ち上がり、東京で大会が開催されました。
そして、3月1日、2日にかけて総勢480人余の方々にご参加いただき、熱く実り多き大会を開催することができました。
今大会は、6年前に第30回記念大会(2001年)と同じ開場で開かれました。大会冒頭の佐藤喜作理事長の挨拶は、「この会場で、第30回記念大会が盛大に行われたことを思いだしております。あの第30回の記念大会のときから今日までわれわれの暮らしなり、あるいは生活なり、あるいは世の中がよくなったでしょうか。どうでしょう」と、始まりました。 大会1日目には、このような「自給と提携、有機農業を運動の中心として進めよう」を骨子とする大会アピールを採択、2日目の午後1時からの第36回通常総会も、このような活動方針を確認する方向で開かれました。
開会挨拶する佐藤理事長
<本会の本年度における活動の方向性>
われわれは、世相の動きに惑わされることなく「自給と提携」を基軸とする実践運動に裏付けられた路線を誠実に、着実に、おだやかに進めていく」とし、次の活動方針を掲げています。
1 結成趣意書の農と食の原点に立った活動の啓発・普及
(①創立者一楽照雄を継承する活動、②本会歴史について略年表等の制作)
2 「自給と提携」を基礎にした有機農業を広める
(①自治体の「推進計画」づくりの推進と参画、②本会有機農業推進委員会の活動推進)
3 「提携」を広める
(①各地の生産者の「提携」を広げるため提携ネットワークの活動を開始する。②「提携」についての広報活動を強める)
4 食べ方で健康と自給を取り戻す
(①食事と健康のつながりに注目し、土に根ざした食、農、医を進める。②自給を高める食べ方、食べる術(手作り食など)を広める)
5 遺伝子組換え、農薬散布、照射食品、環境と健康問題への取組みを強める。
6 地球温暖化問題に有機農業から取り組む
(①緑を増やし、自然エネルギーを活用した農業を進める。②生ごみや落ち葉の堆肥化を進める「堆肥わくわく運動」を進める。③都市では、屋上緑化や屋上菜園を進める)
7 研修機能を強める
(①新規就農者への就農サポートについて、新規就農データ集を作成する。そのほか、具体的検討を進める。②有機農業サポート委員会において、本会として研修システムのあり方を検討し、試行する。)③行政との連繋による有機農業の農業公園作りや有機農業アドバイザーによる研修プロジェクトなどを推進する。④学校から農家への有機農業インターンシップの受入を促進する)
8 自家採種のすすめと有機種苗の提供
(①自家採種運動を推進するとともに、種苗ネットワークの活動を強化する。②優良種苗、奨励種苗の提供体制を整える。③せめて、無消毒種子の販売を義務付けることを提案する)
9 会員をふやす活動を強める
第36回東京大会アピール
つながるいのち・つなげるいのち
食と農の原点 有機農業から未来へ
相次ぐ食品事件は、今の日本の食の現状を浮き彫りにしました。「加工食品の消費が増え、食べものと健康との関係や食品の選択について、消費者の自覚に基づく態度の改善が望まれる」とした結成趣意書で指摘された事態は37年経った今日もなお、変わらぬ課題であり続けています。
いのちをつなぐ食べもの。いのちを生み出し、健康を維持する食べものに対して、あまりにも他人任せにしすぎてはいないでしょうか。
農の現状をみつめてみましょう。1960年代に始められた農業近代化、80年以降の国際化に引き続くさらなるグローバリゼーションの幾重もの波の中で、農する人は激減し、多くのむらは崩壊の危機に瀕しています。経済合理主義、効率化を標榜する新農政は、今に至ってもなお。大規模化・集落営農や遺伝子組み換え等の方向に拍車を駆け続けています。
先覚・一楽照雄は、37年前、「本来農業は、経済外の面からも考慮することが必要であり、人間の健康や民族の存亡という観点が、経済的見地に優先しなければならない」と喝破し、食と農の現状に対して、われわれの英知を絞っての根本的対処が急務であると呼びかけました。
有機農業は、農業近代化が始まる以前、何千年・何百年もの自然と共にあった農業の伝統を踏まえた、自給と循環の農業です。今日、土と切り離された工業化社会が進展する中で、農業もまた、工業化と同じ方向を向いて走っています。有機農業は、そのような方向ではなく、豊かな生物が息づく生きた「土」を要(かなめ)として生きとし生けるものが有機的につながり・つながる、本来のあるべき農業をめざし実践する、ものです。
「提携」って、知っていますか。
つくる人(生産者・農家)と食べる人(消費者・都市生活者)が直接つながり、共に支え合う、食べものと心と暮らしのつながりです。30数年前から、食べものへの不安から、あるいは食のあり方、農業ひいては社会のあり方への反省・批判から、食と農の自給・自立をめざし、共に手を携えて有機農業を進めてきました。有機農業は、農家だけのものでなく、消費者のものでもあり、「提携」を通して生産者と消費者が苦楽を分かち合い、共に支え合う暮らしづくりの提案です。
一人ひとりの自給への意志が、農における自給、食卓の自給、食と農の地域・国内自給を実現させる途です。そしてそれは、「提携」と有機農業でこそ、目標に近づくことができると思います。自給と提携で有機農業を推進していきましょう。
一人でも多くの方に参加を呼びかけます。これからも、自給と提携・有機農業を活動理念に、共に歩んでいきましょう。
2008年3月1日
第36回日本有機農業研究会大会
<東京大会の写真>
3月1日、2日の両日、東京都新宿区で「つながるいのち つなげるいのち」を大会テーマに、第36回日本有機農業研究会全国大会と総会を開催しました。
大会入り口に飾られた生産者らの作物
会場受付の様子
書籍販売 日有研発行の新刊も好評
相原成行大会実行委員長
農林水産省環境保全型農業
対策室 福田英明室長
パネルディスカッションの様子
東京都産業労働局農林水産部 産形稔部長
懇親会の様子
佐藤喜作理事長
基調講演 農山漁村文化協会
副会長 坂本尚
初日は、開会式・基調講演に続いてシンポジウムと5つの分科会が開かれました。
平和って何だろう
「農薬 その光と影」上映会 座長 関塚学
「食」と「農」について語ろう
新規就農を語ろう(青年部)
有機農業推進法に向けての動き
2日目の午前は種苗交換会、2分間スピーチ、記念講演と日本有機農業研究会年次総会が開かれました。
種苗交換会の様子
ナタマメ・大浦ゴボウ
・しまうり
コタントウモロコシ
記念講演 生命とは何か?
福岡伸一
十角ヘチマ
ブドウ(フレドニア)
日本有機農業研究会
〒162-0812
東京都新宿区西五軒町 4-10 植木ビル 502号室
TEL : 03-6265-0148
FAX : 03-6265-0149
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